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『エピソード2:ベリーダンスな二択』第6話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
『エピソード2:ベリーダンスな二択』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。



目的の店は小汚い雑居ビルの4Fにあり、そして狭い店内は予想より混雑していた。
20畳程度の広さに既に10人以上の客がいる。
一斉に放たれた視線を感じた俺達は少し気後れしながら角席のL字型のソファーに座った。
トシちゃんが角の上座に座り、両隣を美紀と小川Pが無敵の接待フォーメーションを組む。
俺は美紀の隣の丸イスに陣取ると、メニューを見ながらとりあえずビール的なオーダーをしている3人を横目に店内の観察を始める事にした。
「そこにあるリアリティーを焼き付けろ」
という、かつて受けた教えはもう俺の日常に染み付いているのだ。
店に入った時に感じた違和感。
その正体はなんなのか、真っ先にソレを俺は確かめねばならない。
俺は周囲に察知されないよう愛用のグレーのキャスケットを少し目深にかぶり直すと、顔の向きを固定したまま眼球を静かに横にスライドさせた。

―――今回もCTUの援護は期待できない。フロッグ、気をつけて
了解、クロエ―――

まず店の中央に置かれた場違いなグランドピアノが目につく。
この狭い空間で、より密度の濃い圧迫感を客に与える見事な配置。
そして何より不思議なのがその上にあるキムラヤで2800円で買ってきたようなCDラジカセ。
そして気高い胡蝶蘭の一輪挿し。
壁に目を移すと「一生感動一生青春」という相田みつおの有名な言葉の額縁の横に、繊細な美人画で有名なアルフォンス・ムシャの絵画。、
窓際に配置されている一見高そうな赤いソファーにいる年齢不詳の親父が、俺の横に座る2人組のお局風OLにちょっかいをだし、そこからたまに嬌声が上がる。
かと言ってそのようなザ・新橋系の客ばかりでもなく、白いワンピースを着た感度敏感系OLらしき女性も奥に見える。
異様なミスマッチだ。
そう、絶対調和の取れないものを強引に日常にひきずり込む事によって起こる認知的不協和。

まさにカオスだ。

その場に居る者の不安感を煽るこのカオスな空気感は横の3人にもすぐに波及したらしい。
(こんな場末な感じの所で本当にベリーダンスのショーなんてできるのかな?)
(客層も微妙ですしねぇ)
(大体踊るスペースないんじゃ?)
(ですよねぇ)
そんな3人のヒソヒソ声も耳に入ってくる。
時々隣にいるお局風OLが耳障りな笑い声をあげ、その肉付きのいい肩がぶつかる。
しかし俺はそれらを全て無視して視線を動かし続ける。

クロエ、まだ今回のターゲット、コードネーム:プリンセスピーチを目視できていない―――
―――焦らないで、フロッグ

そうこうする内に俺達のテーブルにビールとつまみが運ばれ、俺達はアルコールの力で知らぬ間にこのカオスな空間に馴染んでいった。
3人の中年男子が若い女の太ももをチラミしながら杯を重ねる。
誰がどう見ても俺達も立派なカオスを構成していた。

俺は2杯目のビールを底の泡まで舐めるように飲み干す。
その時、小川Pが美紀に唐突な質問をした。
「美紀ちゃんさ、来る途中のタクシー少しあつくなかった?」
「ぇえ、確かにちょっとあつかったです」
俺の脳裏にはついさっきまでの光景が浮かぶ。
「やっぱりね」
一人納得すると小川Pはコップに注がれたビールを軽く飲み干し俺を見た。
悪者の目だ。何かを確信した悪者の目。
しかし場の会話は何事もなかったかのように流れた。
トシちゃんの嬉しそうな甲高い話声がその後に続いた。

5分後にショーが始まるとアナウンスが流れる。

俺はショーの前に用を足しておこうとトイレにたつことにした。
「俺も」と小川Pがついてくる。
店の外にある暗証番号式のトイレのロックをはずし二人並んで連れションをしていると、小川Pが俺の方を覗きこみながら話しかけてきた。
「内田さん、やっぱすごいっすね」
「え?」
俺は自分のマリオに視線を移す。
高校時代、「定規をあてるのはどこからなのか」と友と熱く議論を交わし、「勃起時において裏側の根元ギリギリから計測した長さが正式な記録」と定義された中で21センチと測定されたマリオが目に入った。
しかし俺は知っている。
あの頃はそれが自己のアイデンティティーを強烈に支えていたが今ではそれが誤りであると。
男とは固さと回復力でその価値が決まるのだ。
長さや太さなどの客観的数値に実は何の意味もない。
俺の考えを察知したのだろう。小川Pが言葉を続ける。

「いやいや、アレですよ、アレ」
「アレ?」
「さっき渡した『加藤鷹オリジナルフェロモン for Men』ですよ」
再び悪者の目になった小川Pが俺を見ている。
「さっき、美紀ちゃんがタクシーの中でなんかあつくなったって言ってたじゃないですか」
「うんうん」
「あれは効いちゃってますよ、間違いなくっ」

ハッ!

そういえば
「なんかタクシー乗ったら少しアツクなっちゃって」
と言って俺のほうに顔を向けた美紀の美しい耳が少し上気していたような。
目も潤んでいたような。唇も濡れてたような。
そういう事だったのですか?小川さん
そうなんですね!?

「この際だから駄目押しにもう一吹きしときましょうよ」
暖かい眼差しで小川Pが頷く。その目は仲間を見守る慈愛に満ちていた。
「で、ですかねー」
俺は少し罪悪感を覚えながらもポケットから輝く小瓶を取り出した。
加藤鷹の黄金のフェロモンがトイレにあふれ出す。
そして飛散する光の粒を身体中に浴び、俺は88の星座の中で頂点を極めた最強のゴールドセイントに生まれ変わったんだ。

ヒンズー教はこう教える。
自分が変われば相手も変わる。心が変われば態度も変わる。と
そう、正義と悪の定義など、時の流れによってまるで変わってしまうものなのだよ。
俺は心の中でそうつぶやくと、まだ見ぬピーチ姫に合掌した。






つづく
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| 『episode2:ベリーダンスな二択』 | 16:46 | comments(1) | - | pookmark |

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Comment
車田正美でしたっけ!?
2008/05/01 11:55 PM, from ヌーマ










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