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『エピソード2:ベリーダンスな二択』第4話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
『エピソード2:ベリーダンスな二択』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。



約一時間後、午後8時半。
編集確認も終わり小川プロデューサーとも合流した俺達4人は挨拶もそこそこにショーのある新橋に向かう事にした。
事務所を出て細い路地を青山通りに向かって歩く。
前方には美紀とトシちゃん。少し離れて俺と小川P。
路地の横には小さな野球場とテニスコートがあり、そこに集う人々の幸せそうな日常が見える。
端から見たら俺達もそう見えるんだろうな。
まー実際、俺の心はピーチ姫でワクテクなんだけど。

週末、金曜の夜。ゴールデンウィークの前日――――
いつもだったらこういう設定自体を忘れようとしている自分がいる。
仕事以外の予定もない。
横にいてくれる人もいない。
ただそこにあるのは垂れ流しの時間。糞みたいな時間。
目の前にある現実や未来から目を背け、本当の自分とかいいやがる心の中の亡霊と向き合う時間。
甘い囁きに耳をふさぐ時間。

「ねぇ、大人になったボク、ニコニコ笑ってる?」

奴はいつもそう言って現れる。
「ねぇ、本当にいま楽しいの?」
知るか、ボケっ。
そう毒づく俺の前に奴が姿を現す。
深い闇の中、向こうから幼い頃の自分がシャボン玉を吹いて近づいてくる。
シャボン玉の表面に浮かぶ虹色の輝きに楽しかった日々が浮かんでは消えていく。
知らぬ間に俺の周りを取り囲む無数のシャボン玉。
時を刻むのを止めていた鬱仕掛けの時計がグルグル音を立てて回り始める。
いつの間に、お前はまた俺の脳内に侵入してきたんだ?
俺は今から仲間と楽しいショーを見に行くんだぞ。
お願いだ。許してくれ。
今だけは許してくれ。
「ねぇ、なんでお嫁さんはいなくなったの?」
うるさい。
考えても考えてもまだわからないんだよ。
何が彼女を傷つけていたのか‥
俺の何がいけなかったのか‥
この3年、いくら考えてもまだわからないんだよ。
いや、違う。本当は思い当たることがいっぱいある。
でも、それが正しいのか。
俺にはわからないんだ。
二度と会えない彼女からはもう答えを聞けないんだ。
あーもう俺に構うな。話しかけるな。
お願いだから。
「ねぇ、なんで?」
たのむ、本当に。
「ねぇ?」

――――その時、シャボン玉が割れた。

花の散った桜の木の下で俺は思わず立ち止まっていた。
横で小川Pが心配そうな顔をして俺を覗き込んでいる。
「内田さん、大丈夫?もしかして具合わるい?」
「いやいや、ちょっと寝不足だったもんでー」
「さすが売れっ子演出家はちがうなあ。さあ、今日はテンション上げて飲みまくりましょう」
咄嗟に嘘をつく俺を元気付けるようにお世辞を言う小川P。
こういう気遣いってありがたいよね。
出世する男ってこういう所が違うような気がするな。
歯車でもモーターでもない。潤滑油的な存在。目立たないけど凄く人間関係で大事だよね。
「そうしますかー」
救われた俺の声にも少し元気が戻ってきた。
「で、ですね、今日はちょっと秘密兵器を持ってきてまして」
そう言うと小川Pはカバンの中をゴソゴソとあさり始めた。

テンションを上げる秘密兵器って‥‥
もしかして‥‥
気遣いは嬉しいけどソレはやばいっすよ、小川さん。
数年前、東南新社の演出家がソレで永久追放なったじゃないですか‥‥

「コレですよ」
小川Pはカバンから何かを取り出し俺に見せる。
暗闇に小さな小瓶のガラスが光る。
「なんなんです?ソレ」
ちょっと警戒した声で訊き返す俺を見て小川Pはニヤリと笑った。
「内田さんてホレ薬とか信じます?」
「ホレ薬?‥‥」
惚れ薬といえば‥‥
俺の頭の中では稲中がすぐに思い浮かんだ。
そう、あの天才北里君が作成した「やりたがり2000」。あの京子ちゃんでさえメロメロになった伝説のホレ薬だ。
HITOMIのLOVE2000なんかよりずっと愛がある。
まさか、小川さん。
あの「やりたがり2000」を遂に発明したというのですか!?

「そうそう。イタリア人のフェロモン配合とか昔からあるじゃないですか」
「うんうん」
「こいつはですね、内田さん」

ゴクリッ

「あの加藤鷹のフェロモン配合なのですよ。その名も『加藤鷹オリジナルフェロモン for Men』」
「ナ、ナンダッテ―――!!」
「クククク…クククク…」

小川Pから手渡される小瓶。
否が応でも再びテンションが上がっていく。
そして小瓶が発する後光の中、俺と小川Pは固く手を握り合ってお互いの輝く未来を祝福しあった。
これさえあれば、俺はピーチ姫を‥いや、地球を救うことが出来る。
黄金の指を武器にして‥‥
ありがとう。小川さん。
あんたって奴は、なんてすごいんだ。大きいんだ。まるで海みたいな男だ。
俺の闇に住むあのちっぽけな亡霊とは大違いだ。

「でも、俺がこれ貰ったら小川さんの分がないんじゃ?」
「大丈夫ですよ。まだ3本ありますから」
ニヤリと頷く小川P。さすが出世するプロデューサーは違います。

そんな俺達の紳士な会話を美紀の声が止める。
「内田さんに小川さぁーん。なにやってるんですかぁー」
前を向くと美紀とトシちゃんが20メートル先で後ろを振り向いて俺達を呼んでいる。
俺は小川Pと顔を見合わせるとその後を追う様に再び歩きだした。
その伝説の『加藤鷹オリジナルフェロモン for Men』を身体に吹きかけながら。

しかし俺はその時まだ、今夜これから起こる事を最初からノストラダムスが全て預言していた事に気付いていなかったんだ。







つづく
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(注※文中の『加藤鷹オリジナルフェロモン for Men』は実在する商品です。興味のある方はご自身で効能効果などを調べ、ご自身の判断で購入してください。)
| 『episode2:ベリーダンスな二択』 | 13:03 | comments(1) | - | pookmark |

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また遊びに来させて頂きます^^
2008/04/24 3:07 PM, from ベリーダンス 大阪










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