スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - | pookmark |
<< >『エピソード1:レースクイーンに花束を』第2話 | main | 『エピソード1:レースクイーンに花束を』第4話 >>

『エピソード1:レースクイーンに花束を』第3話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
『エピソード1:レースクイーンに花束を』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。



「できたー」
コンテ作業と格闘すること2時間半。
全神経の完全なる開放を味わいながら俺は声を上げた。
ある意味「いくー」的な恍惚の声。決して「いっちゃう」ではない。「いくー」の方。

「お疲れ様でしたぁ。内田さんの好きなタリーズ買っておきましたよぉ」
そう言うと美紀は俺の大好物であるタリーズのモカをデスクに置き、出来たてホヤホヤのコンテをつまみあげた。
坂本くん、なかなか気が利くじゃないか?
さっきの俺に対する失言の数々見逃してしんぜよう。
俺はモカの香りを鼻腔いっぱいに楽しみながら彼女のコンテへの評価を待った。

美紀はふんふん頷きながらコンテを読んでいる。
こういう女性の真剣な顔って嫌いじゃない。
つうかむしろ好きかも。特に耳が。‥‥キレイです。
なんて美紀の細い首すじを見ながらタリーズで一服するこの瞬間が好きなんだよね。
まさに俺の至福の時。パラダイスタイム。

「いいコンテじゃないですか。特にここのローアングルの円形ドーリーがいいですね」
あーそれ、愛と青春の旅立ちからパク‥‥いやインスパイア受けたんだよね。
「ここも好きだなぁ、女の子ならこのカット絶対キュンってしますよ」
でしょでしょ。そこは内緒だけどコーエン兄弟から‥
「このカットは前に作ったアレに似てますねぇ」
ええええ?なんでわかっちゃうの?
いいえ、絶対パクリなんかじゃないです。
才能の枯渇でもないんです。
見たことの無い映像なんて広告代理店の妄想なんです。見たことのない映像なんて誰も見たことない訳で‥‥
いいえ、嘘です、すいません。
これ全部、俺の脳内で産み出された映像なんです。信じてください。

俺はテストの採点結果を待つ神妙な小学生を演じる。先生どうでしょうか?
そんな俺に彼女は天使の笑顔をみせる。
「20時半過ぎですか‥まぁ時間も間に合ったし、早速取り込んでおくっちゃいますね」
そう言うと美紀はマックに顔を向け作業にはいった。
やっと笑ってくれたよ、先生!

こうなると俺もちょっと余裕がでてちょっとは言い返す元気が出てくる。さっきの仕返しだ。
「まープロなら時間厳守は当たり前だよね、常識常識」
そんな俺に「はいはい」って視線を送ってくる美紀。
その視線やめれ。
っていうか社会人として時間厳守は当たり前ですぜ、つうか「5分前行動厳守」です、先生!
だって昔、D通のCP部の人と合コンした時、集合時間ジャストに集合場所についたら誰も居なくてちょっとキレて電話したら
「内田くん、社会人なら5分前行動厳守でしょ」
って逆に説教くらって、それ以来俺はそれを「信用取引には手をだすな」って家訓と同じ位守ってるんだから。
あの時はベルファーレ横の和食屋だったから迷わず行けたけど、いい女の横の席はガッチリ取られてて涙目だったんだよな。
俺を遅刻常習犯だと思ってる人も多いが、それは間違っている。
俺は絶対遊びの時は遅刻しないのだ。

ウィーン。ウィーン。
スキャナーの音がする。
同時に美紀のマックを叩く指先の旋律が狭い室内に響く。
俺はそんな彼女の作業をタリーズを飲みながらぼんやりと眺めていた。

送信終わるまでが仕事です。ですよね?先生。

そんな俺の視線を感じてか、美紀の耳の後ろがほのかに上気して赤くなっている。
その時だ。
「内田さん、おなかすきません?」
顔をモニターに向けたまま美紀が聞いてきた。
君は人と話す時は相手の目を見て話しなさいって学校で教わらなかったのかな?
「そう言えば、おなかすいたねー」ちょっとイラつきながら返事する。
「なんかパスタが食べたいなぁ」
あっこっち向いた。人としてそれは大事なことですよ。
でも、パスタが食べたいって‥‥俺とですか?
今日は無理ですよ、先約有りですよ。
だって俺には社会人として行かなければならない指名、いや使命があるのです。
22時。時間厳守なのです、先生。

「これ終わったら食べにいきません?」
「え、あ、いや‥これからちょっと人と会う約束があってね」
悔しいながらちょっとドギマギしてしまった俺。
空気が変わる。
「へぇ。カワイイ後輩よりお店の女の子の方が大事ってわけですかぁ」
美紀はまたモニターに顔を向ける。

え?
なんで美鈴ちゃんの店に行くのばれてるのさ。
つうか何で俺、今いいわけしようとしてるわけ?
ここは男なら堂々とスルーでしょ。
でもちょっと待てよ、俺‥‥
こういう時の沈黙って暗に「イエス」って言ってるようなもんだろ。
それに空腹は人間を凶暴化する。この状況は極めて危険だと脳内センサーが告げてくる。
ここは例え銀でも雄弁で攻めるべきポイント。
だそうです。

「いやいや、そうじゃなくてさー」
「はいはい、送信完了。じゃぁ内田さん消燈とロックお願いしますね。お先ですぅ。」
俺の言葉を遮るように一気にまくしたてると美紀は既に扉に向かっていた。
その変わり身の速さ、お見事です、先生。
俺も離婚した時、そのショックをその位のスピードで右から左へ受け流したかったです。

でも神様!どうか彼女に「はい」は一回で良いと教えてあげてください。
「はい」は一回で良いと‥‥

俺は扉の向こうに消え行く彼女のセクシーな後ろ姿に無意識に手を合わせ、そう神に祈った。







つづく
ブログランキング・にほんブログ村へ   
 ↑このバナーをクリックしていただけるとランキングが上がってやる気もアップします。出来ればご協力を。
| 『episode1:レースクイーンに花束を』 | 14:34 | comments(0) | - | pookmark |

スポンサーサイト

| - | 14:34 | - | - | pookmark |
Comment










08
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
--
>>
<<
--
Profile
Sponsored links
New entries
Archives
Categories
Recent comment
勝手にオープニングテーマ曲 BUMP OF CHICKEN - 天体観測 (Tentai Kansoku)
from20070816
ブログパーツUL5
blog-planetarium
Mobile
qrcode
Links
Others
無料ブログ作成サービス JUGEM