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『エピソード2:ベリーダンスな二択』第1話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
『エピソード2:ベリーダンスな二択』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。



車窓から流れる景色を見ると
僕の記憶は時々鍵のかかった過去を彷徨う
もう鍵は捨てたはずなのに

君は僕をどこまで受け入れてくれるの?
君の愛情は本物かい?
もっともっと もっともっと
求めるものだけ膨らんでいき
いつのまにか、君を見失っていた事に気付く
そんな過去の事象の螺旋の中
窓際に立つ僕の目に映る君はもういない

そして
後悔もすこしはしてるよって
シナトラが隣でささやくんだ

--------------------------------------------------------------------------------

やーアミーゴ。元気だったかい?
俺の名前は内田直樹。通称「バツイチ37」と呼ばれるしがないCMディレクターだ。
そして今朝も「ゴミの分別が甘い」と注意されて衆人監視のもと袋を開け分別し直す作業をさせられた、ちょっとチャーミングな37歳。
で、俺がいま何をしてるかというと‥
とある時計メーカーへの自主プレ用ビジュアルコンテ(Vコン)を事務所のマックで編集中なのである。

ここ数年、CM業界じゃ
「画コンテだけじゃ出来上がりの想像がつかなーい」
「映像がないと上を説得できないからイヤイヤー」
なんて小学生みたいに駄々をこねるクライアント向けに30秒程度の簡易的なイメージ映像を作るのが半ば当たり前になっている。
画コンテに合う映像をツタヤで借りてきた映画やドラマ、海外のCFやPVのサンプルから探し出して組み合わせて構成していく感じ。
それにナレーションや音楽つけて一応CMっぽくするって訳。
もちろんこのご時世、かつてデフレの波に飲み込まれた広告業界も予算削減されたままなので、いわゆるサービスってやつだ。
そのサービスの中でも自主プレは更にキング・オブ・サービス。
プレをお買い上げして貰えなければ一切の金銭的報酬のない過酷な作業だ。
まーそんな楽しい仕事を広告代理店パサツーのトシちゃんが持ってきてくれたのである。

でもここだけの話、これが日本の映像業界のパクリマンセー傾向を助長してるのもまた事実。
「え?プレの時と違うじゃない」ってお得意に言われるの怖いからね。

まーそんな話は置いておいて現状を説明すると、パーテーションの向こうでは編集中の俺を放置してトシちゃんと美紀がヒソヒソ話し込んでいる。
編集作業の時ってある程度完成するまで演出家以外ひまなんです。
途中で口だしされると作業効率落ちるからね。
だから二人みたくだべるか、雑誌や漫画読むか、寝ちゃうかって感じの人が多い。

そして俺もちょっと編集に飽きてきたので一服しながらその会話に聞き耳を立てたんだ。
どうやら俺のことを話しているらしい。
「ウッチーはさ、きっと結婚恐怖症ってやつなんだよ」
「へぇ、そんなのあるんですかぁ」
「うんうん、俺も再婚したかみさんと出逢うまではそうだったから良くわかるんだよね」
トシちゃんとの付き合いは長い。もう「ウッチー」「トシちゃん」の関係になってかれこれ10年。
そして、しがない演出稼業の俺にこうやって細かい仕事でも持ってきてくれる大事な兄貴分だ。離婚経験の先達でもある。
それにしても結婚恐怖症って俺も初耳だな。
新手の鬱みたいなもん?

「わかりやすく言うと中山美穂と結婚する前のエコーズ時代の辻仁成って感じかな」
甲高い声で話を続けるトシちゃん。さすが自称天才コピーライターだけあって実にわかりやすい。
「ふむふむ」
理解不能だけどとりあえず相槌うっとっけって感じの美紀の声も漏れてくる。
そんなのお構いなしに語るトシちゃん。
「僕のナイーブなこのハートはいつも孤独っ、みたいなね」
「ふむふむ」
「僕を理解してくれる人はもうこの世にはいない的なね」
「ふむふむ」
「そんな感じなのよ」
「自分を悲劇のヒロイン化しちゃうんですねっ」
「そそ。だからレースクイーンパブなんかに通ってるわけよ。昔の俺みたく」
「なるほどぉ」
なるほどぉって‥坂本くん、全然納得してない感じがモロバレなんですが‥‥
でも、このトシちゃんの分析。全くの的外れじゃないんだよね。
元嫁がいなくなって3年、心にぽっかり開いた穴からずっと大事な何かが流れ出しててさ。
すくってもすくってもソレはこぼれ落ちちゃって、自分という存在が心の中でしぼんでいくんだな。
だから俺はその大事な何かを取り戻すために夜な夜な美鈴ちゃんの「シャイナ」に通ってるわけで‥‥

「でさ、美紀ちゃん、ちょっとこれ見て」
「‥‥」
「どう?」
「どうって言われてもぉ‥」
二人の会話が止まり、事務所の中の有線だけが耳にはいってくる。

え?二人でなに見てるの?気になって作業が止まってしまうんですが‥

「彼女、友達でプロのベリーダンサーなんだけどさ」
「‥‥」
「もうすぐ30なんだけど、まだ独身なんだよね」
お!もしかしてトシちゃん!
「でさ、誰かいい人いないですか?ってこないだ訊かれたんだけど」
「‥‥」
「ウッチーの好みじゃないかな?」
その配慮、お見事です!
兄貴、
毎度毎度ありがとうございます!
お金が払えない仕事でもきっちり報酬を用意するあたりが憎いね、トシちゃん。
つうか、そんな隠し玉まだもってたの?

「うーん、内田さんの好みじゃないと思うけどなぁ‥」
即答する美紀。
ちょっとちょっと、坂本くん!そこで勝手に判断しない!
人様のご厚意はまずありがたく受け取るのが筋ってもんですよ。

「でも、彼女巨乳よ」
「ですねぇ‥確かにセクシーではありますねぇ」

えええ!?
セクシー巨乳ダンサーですか!?
トシちゃん、マジそれ見たいんですけど‥‥いますぐ‥
つうか、もうokでも‥‥






つづく
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| 『episode2:ベリーダンスな二択』 | 11:45 | comments(1) | - | pookmark |

『エピソード2:ベリーダンスな二択』第2話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
『エピソード2:ベリーダンスな二択』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。



俺は居ても立ってもいられず、空のコーヒーカップをもってマックスペースを出た。
そんな俺を見つけてトシちゃんが声をかけてくる。
「ウッチー、編集もう終わった?」
「あーもうちょっとですー」
俺は奥のコーヒーコーナーに向かいながら上の空で返事を返す。

「ちょっとってどんくらいかな?」
「うーん、あとコーピーテロップ入れて微修正するから‥」
「30分くらいかな?」
「そんくらいですかねー」
俺はコーヒーコーナーから戻るとソファーに並んで座っているトシちゃんと美紀の前でコーヒーをすする。
少し焦れてくる。

「じゃ、丁度いい時間かな」
トシちゃんがスーツの袖をめくって時計を確認した。
お!もしかして、もしかして?
いきなり今日会っちゃうって展開ですか?それははっきり言って予想外ですがテンション上がるってもんですよ。
でもこのワクテカ感を二人に察知されてはならない。
だって、編集さぼってパーテーション超しに盗み聞きしてたのばれたらやばいじゃないですか。
プロは仕事をきちんとこなしてこそ報酬いただけるのです。

「丁度いい時間って、トシちゃんどっか行くの?」
「実はさ、女友達のベリーダンサーが9時から新橋でショーやるみたいなんだけど一緒に行かないかなって」
ですよね、ですよね。そう来ないとですよね。
ショー見てはけた後、俺と彼女はone to oneのダンスをベリーする訳ですよね、わかります。

「いいですねー。俺、ベリーダンス生で見るの初めてですよ」
「でしょでしょ。普通あんま見ないからさ、ウッチーの刺激にもなるかなって」
「なにげに流行のきざしもありますしねー」
「うんうん、こういうロケハン大事よ」
この業界はこういう時、本当に便利です。
見るもの、感じるもの、遊ぶもの、全てが仕事に役立つロケハンになるのです。
あ、ロケハンてロケーション・ハンティングの略で、いわゆる下見のことです。
ですが、まーご時勢に漏れずこういう怪しいロケハンの領収書には税務署の目も最近厳しくなってきています。
確かに仕事の面は1割位なのですが‥‥

でも、でもですね。もしここに税務署の方がいらしたら是非聞いてください。
本当にこういうの大事なんです。
大昔ドラマのADをしていた頃、さる大御所の監督に教えられた事があります。
「これが高級クラブか?こんなんじゃ誰もリアリティー感じないぞ」
静まる現場で彼の怒声だけが響いていました。
「セットもダメ。女もダメ。女の話し方もダメ。お前らもっと遊び尽くせ。そして、そこにあるリアリティーを焼き付けろ」
そして彼は続けました。
「演出になりたければ遊びも仕事だ。忘れるな」ってね。
だから、赤紙だけはどうかご勘弁を‥‥

ふと気付くと美紀が俺とトシちゃんを交互に見ている。
そうだ。俺はすっかり忘れていた。
うちの事務所には税務署よりも怖い目が光ってることに‥

それにしても美紀先生。今日のシックなガーリッシュ系の衣装も素敵です。
光沢のあるグレーのフレアーミニと黒のロングブーツの隙間から見えるその生足、輝いてます。

そんな俺の視線を意識してか、足を組み替えながら美紀が訊いてくる。
「え?ベリーダンスって今流行ってるのですかぁ?」
「美紀ちゃん、知らないの?今、20代のOLやセレブ妻の間でブームになりかけよ」
トシちゃんもチラっと太ももに視線を動かす。
「ぇえ、知らなかったですぅ」
「ダイエット効果もあるらしいしねー」
俺もここぞとばかりに美紀にダメ押しをする。
「これは遊びじゃないんだ。仕事なんだよ」と。
しかし、これが俺の最大の誤算だった。
「へぇ、ダイエットにもいいんだぁ」とつぶやいた美紀が、次の瞬間俺に笑顔を向けてこう言ったんだ。

「じゃぁ、私も一緒に行きますっ」






つづく
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| 『episode2:ベリーダンスな二択』 | 16:39 | comments(0) | - | pookmark |

『エピソード2:ベリーダンスな二択』第3話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
『エピソード2:ベリーダンスな二択』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。



美紀の一言に思わず固まる俺。
そんな俺を楽しそうな目をして美紀が見ている。
「大塚さん、いいですよねぇ?」
「いいね、いいね。美紀ちゃんも一緒だと俺も楽しいしね」
美紀の太ももに視線を移しながらトシちゃんものってくる。
「やったぁ」
「じゃ、ウッチーのとこに金出させるの悪いからスポンサー呼んじゃおっかな」
「スポンサーって誰です?トシちゃん」
慌てて俺も訊き返す。
だって俺、こう見えても極度の人見知りでして‥‥
どのくらい人見知りかと言うと、初めての相手だとどうしても勃たないくらい人見知りなのです‥‥
かつてそれで、ある女の子との交渉失敗した翌日に、
「内田さんインポなんですって?○○ちゃんから聞いたよっ」て、
女友達から言われ思わずペレになろうかと思った事もあります。
どうやら○○ちゃんは俺の不甲斐なさを女グループ内で宣伝してくれたみたいでして‥
そしてその○○ちゃんは俺と二度と会ってくれませんでした。
まーこれも今ではいい想い出です、はい。

「ファイブGの小川ちゃん。‥‥ウッチーも知ってるでしょ?」
「あー小川さん、いいっすね」
小川さんとは、銀座にある中堅プロダクション「ファイブG」のプロデューサーで年齢は俺より4個下くらいの独身イケメンだ。
去年一緒に海外長期ロケに行って俺もかなり気心の知れた仲になっている。
美紀とも顔見知りだ。

「今回の仕事もさ、軌道にのったらかんでもらおうと思ってるからさ」
「いいっすねー」
「今の内にまた交流深めておいてよ」
「りょうかいー」
そうしてトシちゃんは電話に、俺は編集作業に、美紀はお化粧直しとそれぞれの作業に迅速に取り掛かった。

残りの編集作業は10分で終わった。
なぜなら、こうなるともう俺のヤル気はキノコを食べたマリオみたいなもんだからだ。
そして、俺の頭の中では早くもまだ見ぬピーチ姫が踊り始める。
彼女は手の中のカスタネットを鳴らしながら、オリエンタルな目元で俺を手招きしてくる。
おっぱいも揺れている。ピーチなお尻も揺れている。
「ヘイ、マリオボーイ」
速まるリズム。
それに合わせて、腰のなめらかな回転運動も徐々に速さを増していく。
「カモーン」
見事な腰の平行移動。スライド運動。
ザクとは違うその動き、全国のマグロ男垂涎の動きがそこにはある。
あーっ、生きてて良かった‥‥

拝啓 全国のマグロ男の皆様
僕は胸を張って言えるよ。『僕は今日、横になったままでいい人と出逢います。』って。


俺は思わず手紙をしたためていた。





つづく
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| 『episode2:ベリーダンスな二択』 | 20:49 | comments(1) | - | pookmark |

『エピソード2:ベリーダンスな二択』第4話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
『エピソード2:ベリーダンスな二択』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。



約一時間後、午後8時半。
編集確認も終わり小川プロデューサーとも合流した俺達4人は挨拶もそこそこにショーのある新橋に向かう事にした。
事務所を出て細い路地を青山通りに向かって歩く。
前方には美紀とトシちゃん。少し離れて俺と小川P。
路地の横には小さな野球場とテニスコートがあり、そこに集う人々の幸せそうな日常が見える。
端から見たら俺達もそう見えるんだろうな。
まー実際、俺の心はピーチ姫でワクテクなんだけど。

週末、金曜の夜。ゴールデンウィークの前日――――
いつもだったらこういう設定自体を忘れようとしている自分がいる。
仕事以外の予定もない。
横にいてくれる人もいない。
ただそこにあるのは垂れ流しの時間。糞みたいな時間。
目の前にある現実や未来から目を背け、本当の自分とかいいやがる心の中の亡霊と向き合う時間。
甘い囁きに耳をふさぐ時間。

「ねぇ、大人になったボク、ニコニコ笑ってる?」

奴はいつもそう言って現れる。
「ねぇ、本当にいま楽しいの?」
知るか、ボケっ。
そう毒づく俺の前に奴が姿を現す。
深い闇の中、向こうから幼い頃の自分がシャボン玉を吹いて近づいてくる。
シャボン玉の表面に浮かぶ虹色の輝きに楽しかった日々が浮かんでは消えていく。
知らぬ間に俺の周りを取り囲む無数のシャボン玉。
時を刻むのを止めていた鬱仕掛けの時計がグルグル音を立てて回り始める。
いつの間に、お前はまた俺の脳内に侵入してきたんだ?
俺は今から仲間と楽しいショーを見に行くんだぞ。
お願いだ。許してくれ。
今だけは許してくれ。
「ねぇ、なんでお嫁さんはいなくなったの?」
うるさい。
考えても考えてもまだわからないんだよ。
何が彼女を傷つけていたのか‥
俺の何がいけなかったのか‥
この3年、いくら考えてもまだわからないんだよ。
いや、違う。本当は思い当たることがいっぱいある。
でも、それが正しいのか。
俺にはわからないんだ。
二度と会えない彼女からはもう答えを聞けないんだ。
あーもう俺に構うな。話しかけるな。
お願いだから。
「ねぇ、なんで?」
たのむ、本当に。
「ねぇ?」

――――その時、シャボン玉が割れた。

花の散った桜の木の下で俺は思わず立ち止まっていた。
横で小川Pが心配そうな顔をして俺を覗き込んでいる。
「内田さん、大丈夫?もしかして具合わるい?」
「いやいや、ちょっと寝不足だったもんでー」
「さすが売れっ子演出家はちがうなあ。さあ、今日はテンション上げて飲みまくりましょう」
咄嗟に嘘をつく俺を元気付けるようにお世辞を言う小川P。
こういう気遣いってありがたいよね。
出世する男ってこういう所が違うような気がするな。
歯車でもモーターでもない。潤滑油的な存在。目立たないけど凄く人間関係で大事だよね。
「そうしますかー」
救われた俺の声にも少し元気が戻ってきた。
「で、ですね、今日はちょっと秘密兵器を持ってきてまして」
そう言うと小川Pはカバンの中をゴソゴソとあさり始めた。

テンションを上げる秘密兵器って‥‥
もしかして‥‥
気遣いは嬉しいけどソレはやばいっすよ、小川さん。
数年前、東南新社の演出家がソレで永久追放なったじゃないですか‥‥

「コレですよ」
小川Pはカバンから何かを取り出し俺に見せる。
暗闇に小さな小瓶のガラスが光る。
「なんなんです?ソレ」
ちょっと警戒した声で訊き返す俺を見て小川Pはニヤリと笑った。
「内田さんてホレ薬とか信じます?」
「ホレ薬?‥‥」
惚れ薬といえば‥‥
俺の頭の中では稲中がすぐに思い浮かんだ。
そう、あの天才北里君が作成した「やりたがり2000」。あの京子ちゃんでさえメロメロになった伝説のホレ薬だ。
HITOMIのLOVE2000なんかよりずっと愛がある。
まさか、小川さん。
あの「やりたがり2000」を遂に発明したというのですか!?

「そうそう。イタリア人のフェロモン配合とか昔からあるじゃないですか」
「うんうん」
「こいつはですね、内田さん」

ゴクリッ

「あの加藤鷹のフェロモン配合なのですよ。その名も『加藤鷹オリジナルフェロモン for Men』」
「ナ、ナンダッテ―――!!」
「クククク…クククク…」

小川Pから手渡される小瓶。
否が応でも再びテンションが上がっていく。
そして小瓶が発する後光の中、俺と小川Pは固く手を握り合ってお互いの輝く未来を祝福しあった。
これさえあれば、俺はピーチ姫を‥いや、地球を救うことが出来る。
黄金の指を武器にして‥‥
ありがとう。小川さん。
あんたって奴は、なんてすごいんだ。大きいんだ。まるで海みたいな男だ。
俺の闇に住むあのちっぽけな亡霊とは大違いだ。

「でも、俺がこれ貰ったら小川さんの分がないんじゃ?」
「大丈夫ですよ。まだ3本ありますから」
ニヤリと頷く小川P。さすが出世するプロデューサーは違います。

そんな俺達の紳士な会話を美紀の声が止める。
「内田さんに小川さぁーん。なにやってるんですかぁー」
前を向くと美紀とトシちゃんが20メートル先で後ろを振り向いて俺達を呼んでいる。
俺は小川Pと顔を見合わせるとその後を追う様に再び歩きだした。
その伝説の『加藤鷹オリジナルフェロモン for Men』を身体に吹きかけながら。

しかし俺はその時まだ、今夜これから起こる事を最初からノストラダムスが全て預言していた事に気付いていなかったんだ。







つづく
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(注※文中の『加藤鷹オリジナルフェロモン for Men』は実在する商品です。興味のある方はご自身で効能効果などを調べ、ご自身の判断で購入してください。)
| 『episode2:ベリーダンスな二択』 | 13:03 | comments(1) | - | pookmark |

『エピソード2:ベリーダンスな二択』第5話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
『エピソード2:ベリーダンスな二択』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。



俺達は伊藤忠の前のタクシー乗り場で2台のタクシーに分乗した。
美紀と俺を乗せたタクシーがやや混雑気味の青山通りを晴海方向に進みだす。
トシちゃんと小川Pを乗せたタクシーが前方に見える。

「ちょっと窓開けてもいいですか?」
そう言うと美紀はパワーウィンドウを少し下げて外を見た。冷たい春の夜風が車内に流れ込み彼女の髪がなびく。
「なんかタクシー乗ったら少しアツクなっちゃって」
美紀は車窓に流れる風景から俺のほうに顔を向けた。
「明日からゴールデンウィークですねぇ」
「だねー」
もう既にこの時間、車窓から見える赤坂の首都高立体交差は渋滞しだしている。
「私だけ明日からお休みいただいても本当にいいんですか?」
「うんうん、別に大丈夫でしょー撮影もないし」
「内田さんは企画3本、休み明けに提出あります」
「はーい、わかっております」
茶化して返事する俺を美紀が軽く睨む。

タクシーは晴海通りの混雑を抜け日比谷通りに入った。
新橋までもうすぐだ。
「ところで、内田さんはゴールデンウィークなにするんですかぁ?」
「うーん、だから企画を‥‥」
「だからぁ、仕事以外でぇ」
「仕事以外かー、うーん‥」

正直返事に詰まった。
誰かにこんな質問を受けるとは予想していなかったので模範解答を用意していなかったのだ。
普通、俺くらいの年になるとみんな結婚していて子供がいたりして、概してこういう連休にもう遊べる仲間がいなくなってる。
10代20代の頃にはわからなかった社会的孤立感を実感するようになってくる。
だからといって部屋であの亡霊くんと向き合うのもしんどい。
打ちっぱなし行くか、パチンコ行くか、24のDVDを最初から全部見直すか‥‥その程度のものしかない。
趣味のないオヤジの哀れな末路なんてこんなもんだ。
しかし俺の口から出た言葉はそのどれでもなかった。

「大掃除でもしようかなー」

はっきり言って俺の部屋は別段汚くもないがキレイでもない。
でもなんか無性に掃除したくなったんだ。
俺の部屋。総面積62平米の1LDK。
玄関から廊下が2メートルくらいL字にあって、15畳のキッチンダイニングと15畳のリビング。
それにトイレ、洗濯機置き場、風呂場がある。
部屋の角や廊下の隅で飼い猫の抜け毛やホコリが束になってるが、男なら気にしないものだ。
風呂場の水垢にキッチンまわりの油汚れ。これも男なら気にしない。
リビングに散乱する雑誌の束やちょっとハードな裸のロマンス物DVDもあるがソレも全く気にならない。男なら当然だ。
一人暮らしの男の部屋なんて大体こんなものだろうと自分では思っている。
だが、気にいらない事がある。
俺の元嫁は3年前の3月30日の朝、俺の作った朝飯を食って会社行ってそのまま二度と帰ってこなかったのだが、
そう、二度と帰ってこなかったのだが‥‥
別居1年、判を押して2年経った今でも未だに自分の荷物を全く引き取りに来ないのである。
まさに「ザッツ夜逃げ」のような離婚であった。

普通、引き取りにくるだろ?jk

という訳でウチのクローゼットやタンスには元嫁の衣装や下着が未だにあるわけで、
それらの破棄、もうこの際全部破棄破棄破棄破棄破棄破棄破棄破棄破棄破棄破棄破棄。
気分はJOJOって感じで今更ながらそれを思い立った訳だ。

3年も経っててまだ破棄してなかったのかって?
それは訊かないお約束だろ?アミーゴ
だって、忘れたふり、吹っ切れたふりをしていても俺の心の時間はあの日から正直止まったまんまなんだから‥‥
いつか戻ってくるかもしれないって淡い期待もあったし‥‥
戻ってきた時、服ないと困るじゃん!
裸にエプロンじゃ恥ずかしいし‥‥寒いし‥‥

「掃除ですかぁ、いいですね、掃除。私も掃除しようかなぁ」
妙に納得した顔で頷く美紀。
「内田さんは何でもやりっぱなしで後片付けしないからなぁ、そういうとこ直さないと‥」
「直さないと?‥‥」
聞き返す俺の目の中で美紀の目が笑っている。

その時タクシーが目的地に着いた。ドアが開く。
美紀は先にタクシーから降りると車内を覗きこんでまだ精算中の俺に向かってお茶目な笑顔でこう言った。
「彼女できませんよっ」





つづく
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ゴールデンウィーク何しますか??
| 『episode2:ベリーダンスな二択』 | 11:50 | comments(1) | - | pookmark |

『エピソード2:ベリーダンスな二択』第6話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
『エピソード2:ベリーダンスな二択』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。



目的の店は小汚い雑居ビルの4Fにあり、そして狭い店内は予想より混雑していた。
20畳程度の広さに既に10人以上の客がいる。
一斉に放たれた視線を感じた俺達は少し気後れしながら角席のL字型のソファーに座った。
トシちゃんが角の上座に座り、両隣を美紀と小川Pが無敵の接待フォーメーションを組む。
俺は美紀の隣の丸イスに陣取ると、メニューを見ながらとりあえずビール的なオーダーをしている3人を横目に店内の観察を始める事にした。
「そこにあるリアリティーを焼き付けろ」
という、かつて受けた教えはもう俺の日常に染み付いているのだ。
店に入った時に感じた違和感。
その正体はなんなのか、真っ先にソレを俺は確かめねばならない。
俺は周囲に察知されないよう愛用のグレーのキャスケットを少し目深にかぶり直すと、顔の向きを固定したまま眼球を静かに横にスライドさせた。

―――今回もCTUの援護は期待できない。フロッグ、気をつけて
了解、クロエ―――

まず店の中央に置かれた場違いなグランドピアノが目につく。
この狭い空間で、より密度の濃い圧迫感を客に与える見事な配置。
そして何より不思議なのがその上にあるキムラヤで2800円で買ってきたようなCDラジカセ。
そして気高い胡蝶蘭の一輪挿し。
壁に目を移すと「一生感動一生青春」という相田みつおの有名な言葉の額縁の横に、繊細な美人画で有名なアルフォンス・ムシャの絵画。、
窓際に配置されている一見高そうな赤いソファーにいる年齢不詳の親父が、俺の横に座る2人組のお局風OLにちょっかいをだし、そこからたまに嬌声が上がる。
かと言ってそのようなザ・新橋系の客ばかりでもなく、白いワンピースを着た感度敏感系OLらしき女性も奥に見える。
異様なミスマッチだ。
そう、絶対調和の取れないものを強引に日常にひきずり込む事によって起こる認知的不協和。

まさにカオスだ。

その場に居る者の不安感を煽るこのカオスな空気感は横の3人にもすぐに波及したらしい。
(こんな場末な感じの所で本当にベリーダンスのショーなんてできるのかな?)
(客層も微妙ですしねぇ)
(大体踊るスペースないんじゃ?)
(ですよねぇ)
そんな3人のヒソヒソ声も耳に入ってくる。
時々隣にいるお局風OLが耳障りな笑い声をあげ、その肉付きのいい肩がぶつかる。
しかし俺はそれらを全て無視して視線を動かし続ける。

クロエ、まだ今回のターゲット、コードネーム:プリンセスピーチを目視できていない―――
―――焦らないで、フロッグ

そうこうする内に俺達のテーブルにビールとつまみが運ばれ、俺達はアルコールの力で知らぬ間にこのカオスな空間に馴染んでいった。
3人の中年男子が若い女の太ももをチラミしながら杯を重ねる。
誰がどう見ても俺達も立派なカオスを構成していた。

俺は2杯目のビールを底の泡まで舐めるように飲み干す。
その時、小川Pが美紀に唐突な質問をした。
「美紀ちゃんさ、来る途中のタクシー少しあつくなかった?」
「ぇえ、確かにちょっとあつかったです」
俺の脳裏にはついさっきまでの光景が浮かぶ。
「やっぱりね」
一人納得すると小川Pはコップに注がれたビールを軽く飲み干し俺を見た。
悪者の目だ。何かを確信した悪者の目。
しかし場の会話は何事もなかったかのように流れた。
トシちゃんの嬉しそうな甲高い話声がその後に続いた。

5分後にショーが始まるとアナウンスが流れる。

俺はショーの前に用を足しておこうとトイレにたつことにした。
「俺も」と小川Pがついてくる。
店の外にある暗証番号式のトイレのロックをはずし二人並んで連れションをしていると、小川Pが俺の方を覗きこみながら話しかけてきた。
「内田さん、やっぱすごいっすね」
「え?」
俺は自分のマリオに視線を移す。
高校時代、「定規をあてるのはどこからなのか」と友と熱く議論を交わし、「勃起時において裏側の根元ギリギリから計測した長さが正式な記録」と定義された中で21センチと測定されたマリオが目に入った。
しかし俺は知っている。
あの頃はそれが自己のアイデンティティーを強烈に支えていたが今ではそれが誤りであると。
男とは固さと回復力でその価値が決まるのだ。
長さや太さなどの客観的数値に実は何の意味もない。
俺の考えを察知したのだろう。小川Pが言葉を続ける。

「いやいや、アレですよ、アレ」
「アレ?」
「さっき渡した『加藤鷹オリジナルフェロモン for Men』ですよ」
再び悪者の目になった小川Pが俺を見ている。
「さっき、美紀ちゃんがタクシーの中でなんかあつくなったって言ってたじゃないですか」
「うんうん」
「あれは効いちゃってますよ、間違いなくっ」

ハッ!

そういえば
「なんかタクシー乗ったら少しアツクなっちゃって」
と言って俺のほうに顔を向けた美紀の美しい耳が少し上気していたような。
目も潤んでいたような。唇も濡れてたような。
そういう事だったのですか?小川さん
そうなんですね!?

「この際だから駄目押しにもう一吹きしときましょうよ」
暖かい眼差しで小川Pが頷く。その目は仲間を見守る慈愛に満ちていた。
「で、ですかねー」
俺は少し罪悪感を覚えながらもポケットから輝く小瓶を取り出した。
加藤鷹の黄金のフェロモンがトイレにあふれ出す。
そして飛散する光の粒を身体中に浴び、俺は88の星座の中で頂点を極めた最強のゴールドセイントに生まれ変わったんだ。

ヒンズー教はこう教える。
自分が変われば相手も変わる。心が変われば態度も変わる。と
そう、正義と悪の定義など、時の流れによってまるで変わってしまうものなのだよ。
俺は心の中でそうつぶやくと、まだ見ぬピーチ姫に合掌した。






つづく
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| 『episode2:ベリーダンスな二択』 | 16:46 | comments(1) | - | pookmark |

『エピソード2:ベリーダンスな二択』第7話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
『エピソード2:ベリーダンスな二択』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。



俺達が店に戻ってほどなく店内が暗転し、情熱的なオリエンタルな曲にのって二人の女性が登場した。
一人は白人。もう一人は日本人。
ふたりとも肉体的なふくよかさが魅力的で、エキゾチックなメイクが輝く衣装にとても映えている。
俺は思わずトシちゃんの顔を見た。

トシちゃん、どっちなの?どっちがピーチ姫なの?

しかし俺のそんな視線に気付くはずもなくトシちゃんはダンスを見ている。
美紀が横を向いてる俺に気付き耳元で小声で囁く。
「内田さん、すごくいいですよ。ちゃんと見ないと」
ですよね。そんな下心丸出しじゃクリエイターとして恥ずかしいですものね。
俺は美紀に軽く頷くと視線を彼女達に戻した。
そうして少し醒めた目で踊りを見ていた俺だったが、やがて彼女達の動きに目が釘付けになっていた。

なんなんだ、この波動は。この心に伝わってくるビートは。

非常に女性的な曲線を描く彼女達の肢体が宙に舞うベールに見え隠れする。
腰と肩がそれぞれ別の円運動を描き、崩れそうになるバランスを回転した腹筋が支える。
カスタネットを打ち鳴らす腕が上下に柔らかく、時には激しく妖艶に動き、曲調が激しくなるにつれ、各部位の動きは更にその速度を増し,徐々に踊りはエロスから昇華していく。
そこにあるのは、踊り手の想い、思想。
そしてその背景にある彼女達の人生経験が俺の心に熱く響く。
ハートが震える。

素晴らしい。本当に素晴らしい。
ベリーダンスとはここまで素晴らしいものだったのか。

踊る二人の動きが共鳴するように高まって行く。
店にいる客の全てがそれに魅入っていた。

やがて二人の女性は同時にエクスタシーに達し、その動きを完全に止め、俺達はようやく彼女達の魔法から解かれた。
「いやーすごいね。ちょっと感動した」
俺の言葉にみんなが頷く。
彼女達がバックルームにはけた後でも、まだその余韻が店に残っていた。

「俺もアヤちゃんがプロになってから初めてショー見たんだけど、これはかなりすごいね」
そう言うとトシちゃんは興奮気味にビールを一気に喉に流し込んだ。
「トシちゃんの友達って日本人の方ですかー」
当たり前ですよね。アヤちゃんて名前の白人がいたら逆に会ってみたいですよね。
でもよかったです、日本人の方で。
だって、スーハースーハーオウイエーじゃ感じないじゃないですか。
「そそ。ウッチーもなんか感じるものあったんじゃない?」
「それは表現者としてですか?男としてですか?」
「男としてって‥」
美紀がぼそっと呟き、呆れた目線を送ってくる。
「いやいや、両方、両方。俺はウッチーとアヤちゃんお似合いだと思うんだ、色んな意味でね」
「表現者は表現者を知るって言いますしね」
すかさず小川Pがうまい相槌を打つ。
「そそ。ショーもう一回あるからさ、それ終わったら彼女紹介するから、まぁウッチーも考えておいてよ」
「りょうかいー」

トシちゃんが席をたってトイレに向かう。
俺は空になったコップを美紀の前に持っていくが、美紀は気付かない振りをして小川Pと話し込んでいる。
いいもん、いいもん。僕さみしくなんかないもん。
俺はしょうがなく手酌でビールを注ぐと、壁にかかっているムシャの画にそっと乾杯した。

人生、辛いこといっぱいあるけどさ、こんなイイコトもたまにはあるんだよね。
真面目に生きてれば神様は絶対見ててくれてる。
『三十路の恋はプラトニック』って決めてたけど、アヤちゃんだったらもう守れそうもないよ、神様。
うん、絶対無理。
たぶん3秒で無理。
いいですよね?もう僕の禊は済みましたよね?

そんな俺に美人画の中のビーナスが微笑み、囁く。
「お前はここまで孤独によく耐えてきたよ。もうそろそろ自分を自由にしてあげなさい。」
俺は感謝の言葉を唱え、ビーナスの鎖骨に軽くキスをした。






つづく
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| 『episode2:ベリーダンスな二択』 | 17:09 | comments(1) | - | pookmark |

『エピソード2:ベリーダンスな二択』第8話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
『エピソード2:ベリーダンスな二択』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。



その時だ。
俺はどこからか舐めるような視線を感じた。
この違和感、さっきとは違う。
誰だ!?誰が俺を見てるんだ!?

美紀か?

俺はとっさに眼球を美紀の太ももに向かって動かす。
美紀は俺に完全に背中を向け無視モードに入っている。
トシちゃんがいなくなったスペースを埋め、もう完全に小川Pと二人の世界ぽい空気。

もしや、アヤちゃんか!?

今度はグランドピアノの向こうにあるバックルームの入り口に目を向ける。
しかし、そこに人影はない。
視線は更に俺に絡みつき俺に囁きかける。
「俺の死刑執行は一味違うぜ」
誰だ!お前は誰だ!俺を見てるのは誰だ!
焦る俺の耳には電気グルーブのあの名曲がこだまする。

(誰だ!別れた女にいつまでも未練を引きづってる奴は誰だ!)
(誰だ!風呂場でおしっこしてる奴は誰だ!)
(誰だ!かさぶた食べたことある奴は誰だ!)
(誰だ!自分の携帯で自分の○ンコを写す奴は誰だ!)
(誰だ!お前は誰だ!)
(誰だ!すね毛でありんこ作ってる奴は誰だ!)
(誰だ!俺は王様だと思ってる奴は誰だ!)
(誰だ!ナイーブなふりして女の母性本能をくすぐろうとしてる奴は誰だ!)
(誰だ!TSUTAYAのアダルトコーナーで30分も悩む奴は誰だ!)


誰だ!誰だ!一体俺は誰なんだー!?


その時また隣の肉付きのいい肩がぶつかった。
俺は不愉快な表情を浮かべ静かにゆっくりと丁寧に首を右に回す。


‥‥‥‥

‥‥‥



おまえかあああああああああああああああああああああああああああ



そう、俺は隣に座っているお局風OLと目が合ったままその場で硬直したんだ。
そして、その目は俺に再びこう語った。
「俺の死刑執行は一味違うぜ」

いやああああああああああああああああああああああああああああああ





つづく
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| 『episode2:ベリーダンスな二択』 | 19:29 | comments(3) | - | pookmark |

『エピソード2:ベリーダンスな二択』第9話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
エピソード2:ベリーダンスな二択』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。



この状況は一体なんなんだ。やべ、現実が直視できなくてまばたきが止まらねー。
俺は今夜、この新橋の豪華客船タイタニックでアヤちゃんと出逢う運命のはずだった。
one to oneのダンスをベリーするはずだった。
それがなぜか今、こまわり君に似たお局様と見つめあっている。
なぜだ、なぜなんだ!
誰か、誰かこの状況から俺をタスケテ・・・−−−・・・


・・・−−−・・・

まばたきのモールス信号。それはSOS。
俺は無意識下で誰にあてることもなくこの救援信号を発していた。
誰か気付いてくれ。

・・・−−−・・・(SOS)
・・・−−−・・・(SOS)

そんな俺を見つめて、こまわり君がきっちり等間隔で5回まばたきを繰り返す。
その表情はまるで猪木が弱った相手の周りをグルグル回りながらステップ踏むくらいの余裕を見せている。
なぜだ、なぜお前は笑うんだ!?
そして、なぜお前までまばたきをするんだ!?
俺はあまりの謎に思わず吸い込まれていた。
こまわり君のまばたきは尚も続く。

「・ ・ ・ ・ ・」

ハッ!

「・ ・ ・ ・ ・」

まさかソレは!?

「・ ・ ・ ・ ・」

ア・イ・シ・テ・ルのサインかーーーーーーーーーーーーーー!


ちゃんとキミに伝わってるかな?
僕はSOS信号を送っていた訳で、キミにアイシテルのサインを送っていたわけでは決してない訳で‥
キミと一緒に未来予想図を描くつもりはサラサラない訳で‥

恐怖と絶望のあまり完全にスパークした俺はクラクラしながら小川Pに視線を向けた。
すると小川Pは俺を見たまま笑っていた。悪者の目で笑っていた。
その横では美紀がいつの間にか上着を脱いでノースリーブから眩しい腕を晒している。
え?
どういうことですか?小川さん
俺は小川さんのアドバイスに従ってゴールドセイントになったというのに、なんで俺はこまわり君担当なんですか?
その時、俺の脳裏にさっきのトイレのシーンがフラッシュバックした。
俺が駄目押しの一吹きをした時、小川Pは今と同じ悪者の目を一瞬浮かべていた。
そう。一瞬だったが、確かに今の目を。
ハッ!
まさか、小川さん!まさか!!!

「シャー!はかったな、シャー!」
「ククク‥坊やだからさ」

二人の間で火花散る無言の会話。
その会話を打ち消すようにショーの第二幕を知らせる音楽が再び店内に流れ始めた。





つづく
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| 『episode2:ベリーダンスな二択』 | 18:04 | comments(0) | - | pookmark |

『エピソード2:ベリーダンスな二択』第10話

バツイチ37(batsu-ichi thirty-seven)
『エピソード2:ベリーダンスな二択』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

10

20分後。
ショーが終わってアヤちゃんが俺たちの席に合流した。
軽く自己紹介を終えるとワインを開け、一気に場のペースが上がる。
アヤちゃんの肉感的な身体がこまわり君のアイシテルのサインを見事にブロックしてくれて、俺もようやく自分を取り戻した。

それにしても見事なおっぱい。
ムンっとむせかえる女の匂い。
あーこの人とone to oneのダンスを踊る運命だったのかと実感する。
(ア・イ・シ・テ・ル)
俺は彼女をやさしく見つめ、まばたきする。
キョトンとした顔で俺を見つめ返すアヤちゃん。まばたきする俺。
(ア・イ・シ・テ・ル)
キミの胸に届くといいな、このオモイ、このキモチ。
もう気分は完全に恋人です、はい。
男なんて3秒あれば恋はできるのです。

「内田さん‥‥」
アヤちゃんが少し身体を寄せてくる。
「なんだい?アヤちゃん」
俺も彼女の肉圧を感じるようそっと身体を傾ける。
二人の間にもはや距離はない。周囲の喧騒も気にならない。
僕の瞳の中にはキミがいて、キミの瞳には僕がいる。
キミのかわいい唇が僕の瞳の中で動き始める。
「ちょっと言いにくいんですけど‥」
僕には何が言いたいかもうわかってるよ。
(ア・イ・シ・テ・ル)
キミのまばたきが僕に教えてくれた。
勇気を持って言ってごらん。

「内田さんの離婚の理由って何なんですか?よければ聞きたいな」
「えっ?」

ソノシツモン、ヨソウガイデス

「うんうん」
「私も聞きたいですぅ」
「俺も俺も」
その場にいる全員が異口同音に俺の気持ちを考えない相槌をうち、回答を促す。
明らかに興味本位の目が俺に集まる。
人の不幸は蜜の味。
人間なんてどこまでいってもそんなもんだ。
俺はその視線の痛みに耐え切れずに口を開いた。

「え、えっとですね‥性の不一致ってヤツですよ」

普通の人ならこれ以上突っ込んで理由を聞いてこない。
みんなは知っているだろうか?
昨今の離婚理由において性の不一致が上位にあがってきている事を。
その理由はきっとここにある。
誰にも触れられたくないからね、心の傷は。
いちいち自分の心に向き合うのは疲れるんだ。
キミ達もいい大人なんだからこれ以上は突っ込まないよね?

しかし、場はまたしても予想外に盛り上がった。
「ウッチーそれ俺初耳だわ」
「それってセックスレスってヤツです?」
「奥さんにTバック強要したんじゃないんですぅ?」

「いやー、まーいいじゃないですか‥」
Tバック強要したって‥‥

少し苛立ちを覚えた俺はポケットから煙草を取り出すと火をつけた。
たゆたう煙が目の前の現実を曖昧にぼかしていく。
それを見てアヤちゃんが再び身を乗り出した。
「また質問なんですけど‥」
一瞬の躊躇が風となって煙を流す。

「セックスが終わった後、真っ先に水を飲みます?タバコを吸います?」

それを聞いた俺は、乾いた喉に煙を思いっきり吸い込んだんだ。




つづく
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| 『episode2:ベリーダンスな二択』 | 17:24 | comments(0) | - | pookmark |

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